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あの傷痕の話をした後、わたしは傘を差さずに学校から帰ったせいで風邪を引き、こじらせてしまった。

そのおかけで一週間学校を休む羽目になり、さらにそのまま期末テスト週間に突入し、部活にも行けず、結局先輩とたいして話ができないまま、夏休みに入ってしまった。

園芸部の畑の水撒きに行っても、たいてい先輩が水遣りを終えて帰った後で(どうがんばっても早起きができなくて)先輩と会えない日々が続き、わたしは悶々としていた。

先輩に会って……

そのことを考えると胸が苦しかった。

その日も、学校についたときにはもう、園芸部の花壇と畑には水が撒かれた後で、先輩の自慢の野菜や草花は生き生きと緑を輝かせていた。

わたしの背丈ほどもあるヒマワリが情けないわたしを笑っているような気がした。

今日こそはと決意して、わたしは先輩の家の前までやってきた。

なのに、どうしてもインターホンが押せなかった。

「なにやってるんだろう……」

傷の話をした時、先輩は笑っていたけど、ちょっとつらそうだった。

先輩は口は悪いけど、あの時、傷痕のことをきいたわたしを怒ったりはしなかった。

でもちゃんと謝っておきたかった。

炎天下の中どこをどう歩いたか分からなかったけど、ぐるぐると回って歩きつかれたところで神社の鳥居が見えた。

確かここは無人社だったと思い出して、神社の日陰で休んでいくことを思いついた

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