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「何を泣いているのかえ、お嬢さん」

先輩のことを考えてまた自己嫌悪に陥っていた。

そんな時に優しげな声が耳元で聞こえた。

「え……あれ?」

わたしはいつの間にか泣いていた。

顔を上げると白いレースのハンカチを差し出した品の良い着物のお婆さんがわたしの隣に腰掛けていた。

「すみません……」

わたしはハンカチで涙をぬぐった。

「どういう事情なんだい、話せば楽になることもあるよ、わたしでよかったら聞かせてくれないかい」

ご婦人の優しい笑顔をみたらなんだかほっとしてしまって……ぽつりぽつりと話すうちにまた涙が出てしまった。

「よしよし、そうかい。気持ちはようく分かったよ。辛かったね」

「こんなこと聞いてもらって、ありがとうございます……」

「あんた、いい子だね」

ご婦人はわたしの頭を優しくなでてくれた。

「よし、決めた。わたしはあんたに協力するよ」

「え」

「その過去、変えられるとしたらあんたは何でもするかね?」

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