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「おい、みやこ」
懐かしい人の声がした。
「ん……」
「京(みやこ)、おきろ」
目を開けると夏の日差しで目がくらんだ。
蝉の声が聞こえる。
ゆっくりと視界が輪郭を取り戻していく……。
「やっとおきたか……」
「ゆうじ……くん?」
べしっ
デコピンが額に炸裂した。
「何、呼び捨てしてくれてるんだ?」
「せせせ、先輩!?どうして?」
神社の軒先、木漏れ日、蝉の声。
「どうしてって、ここはおれの家の近くだし。それを言うならその質問そのままお前に返したいとこだぜ」
「もしかして、夢……だったのかな」
「は?おい、なに言ってんだおまえ……つーかいったいその格好は何だ?」
「へ?」
「服着たままシャワー浴びる趣味があるのか?風邪ひくぜ」
気づけば、わたしは全身ずぶぬれだった。
「え!?」
「ったく……わかんないな。俺はお前がここに寝てたってだけでびっくりしてるのに。それにその髪どうしたんだ……」
「ふぇ?」
髪に手を当てようとして気づく。
背中まで届いていたわたしの髪はバッサリと肩の上で切られていた。
過去に行く代償におばあさんに上げた私の髪……
「やっぱり……夢じゃなかったんだ」
じゃあ……!?
「おーい、大丈夫か、京?これ、何本に見える?」
三本の指をわたしの目の前でぶらぶらと揺らす先輩の顔には、メガネはかけられていない。
右目には……傷は……無い……!
「先輩その右目……」
「目がどうしたってんだ……やっぱ重症だな。頭から水かぶってるのに熱射病かよ?」
「良かった……わーい」
思わず先輩に抱きついてしまった。
「お、おい、やめろ、おれまで濡れるだろ……」
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